やまと薬膳 食の基本
食事は本来、体を養い守る行為であり、食物そのものが薬とも言えます。
生きる環境に根ざし、素材を体に適応させ、健康へと導く知恵と技術をもって営まれる食事を「薬膳」と称し、その基本的なあり方を以下にあげてみました。
薬膳はどこの国にもあるはずです。
命をいただく
人は食べものを摂ることで体にエネルギーを取り込み、生きています。
食べものは生命の根源であり、そこには命があり、人が生きるために必要なエネルギーが宿っています。
穀物はなるべく精白されていない玄米で、野菜は皮も根も捨てずにすべてをいただきます。
お米でも野菜でもそれ全体として調和がとれた一つの命を丸ごといただくことでその全エネルギーが生命の糧となります。
私たちは、それを与えてくれる自然に感謝する心を忘れないようにしたいものです。
土地と季節にあった食べものを摂る
人も自然の一部であり、体が環境に適応できるような食生活を送る必要があります。
私たちは環境に生きる生物であり、自分たちが暮らす土地のものをいただくこと、そして季節に合わせることが最も身体にとって自然で無理がないのです。
ところが今、環境は汚染され、季節は無視されている傾向にあります。
住んでいる土地に生えたものでない遠方の食材を輸入し、冬に極度の夏状態、つまり過剰暖房の室内で南国の果物やアイスクリーム、冷えたビールなどを日常的に摂るという状態では体のバランスが崩れてもしかたのないこと・・・。
同じ米であってもできたところによって成分バランスも、エネルギーも変わります。
季節にできるものには旺盛な生命力があります。生命力は美味しさでも感じることができます。
それ自身の生命力で育ったものではエネルギーがおのずと違います。できるだけ環境に体を順応すべく、
その土地と季節にあった生命力あふれるものをいただきましょう。
穀類を中心に
穀類はエネルギー源として理想的な食べものです。なかでもお米は消化、食べやすさ、ミネラルのバランスの点で優れています。
穀類は禾本科に属し、稲、麦、とうもろこしなど世界中に分布しており、1万種以上あります。氷河期の後に地上に現れた生命力の強い植物です。人間は禾本科を摂ることで生き延び、大脳の発達を見たといわれます。また歯の構成をみても穀類がしっかりと噛み砕けるように発達したようで口腔内で分泌される消化液に含まれる酵素は炭水化物を消化します。
こうした点からも基本的な食事のバランスは、主食として穀類を6割、季節の野菜や海草などを3割、たんぱく質を含むものを1割とするのが望ましいでしょう。また、体に負担が大きいことから砂糖や動物性のものはできるだけ控えたいです。動物性でなくても植物性のもので体を維持することに支障はありません。環境汚染がいわれる現代では動物性なしの方が明確に体をきれいにしますし、結果として環境にやさしい食事にもつながります。
体に合わせた食の舵取りを
生まれつきの体の状態を体質といいます。
一方、その後の食べもので作ってきた体の状態を体調と言います。体質は先祖や親の食べたもので作られたもので、なかなか変えられません。しかし、三代で変わることができるとも言われています。普通は遺伝と言いますが、「食伝」とも言えるでしょう。
体質的に恵まれた人も恵まれていない人も自分で選ぶ食べものによって良くも悪くもなりますから、自分の体質、体調を知り適切に食を調整して上手に舵取りをしていくことが大切です。食べることに毎日かかわっている私たちは、食べものこそが体を育て、維持し、修復し、日々の命をつないでいくという、食べなければならない生き物です。何が自分に適し命を養うかを知り、健康管理を自ら行うことは大切なことです。
そのためにも食事のバランスを意識し、体に負担をかけすぎない中庸な食事を基本に健康管理に努めていきましょう。